-*ダイス勝負師の日常*-

ダイス勝負師の日常#3000文字勝負 3000文字チャレンジ
ダイス勝負師の日常#3000文字勝負
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 【バトルダイス】――と呼ばれるものが、その国では流行っていた。
 「召喚ダイス」「スキルダイス」「アイテムダイス」「補助ダイス」……計4種類のダイスを用いて、勝負をするゲームである。
 あまりに流行しているため、国では知らない者はいないし、バトルダイスを生業にしている者さえ多く存在する。

「その腕輪……お前、ダイサーだな!」
「そうとも。……ほう、あんたもダイサーのようだな」

 街を行き交う人々、すれ違いざま、右手首にシルバーのブレスレットを付けている青年が、色さえゴールドではあるものの、やはり同じようにブレスレットを右手首に付けている男性に声をかけた。

 バトルダイスを行う者である証のブレスレットをつけている者は、ダイサーと呼ばれている。
 そしてこの国では、ダイサーがすれ違うとこうしてバトルが行われるのが日常茶飯事であった。

「ルールはvs1で良いか?」
「構わん。……ところで、ハンディを付けてやろうか? お前はシルバーだろう?」
「いらねぇよ!」

 少し小馬鹿にしたような男性の言い方、言葉にむっとしたように青年が眉を寄せる。
 腰に付けていた小袋のひとつから、色とりどりな10面ダイスをいくつか取り出し、わずかに悩んだ後、ひとつを手元に残して他のダイスを袋へ戻す。
 優美に笑みを浮かべて、口元には余裕ゆえか弧を描く男性もまた、ダイスをひとつ選び、軽く握りしめた。

「じゃあいくぜ――」
「あぁ――」
「「バトル!!」」

 単純明快な掛け声と共に、ふたつのダイスが地に転がされ、数字が真上に浮かび、それが掻き消えたと同時に、

『グァァォオオオオオオオオオオッ!!!!』
『シャァアァァアアアアアアアッ!!!!』

 青年側には牛の角を持つ、両手に大きな斧を持ったミノタウロスのようなモンスターが浮かび、実体化する。
 男性の方では、それよりも一回り大きい、大きな青い龍のような、蛇のようなモンスターが実体化した。

 そして、びりびりと周囲の家々に響くほどの大声量の声と、みしりと歪む地面は、現れたそれらが幻影や、映像の類ではないことを実感させる。

 ――バトルダイスは、いわゆる「召喚魔法」を組み込んだ遊びだ。
 この国――この世界では、魔法を実際に扱い、魔道士、魔法使いとして冒険者を職業としていたり、研究者となる人間が多い。
 また、生活に根付いていることもあり、全ての人間が自在に使える力として「当たり前のように」魔法が存在している。
 もはや、生活必需力とも呼べる存在となっていた。

 しかし一方で、世界や国、または世界をまたいでどこからか、何かを、誰かを「喚ぶ」魔法は極めて希少だ。
 希少、というよりも、現代魔法では失われてしまった技術と言って遜色はない。
 何百年、何千年と昔には存在したはずの「召喚士」と呼ばれる存在が消え、しかし彼が「いた」という証明は、本や残されたアイテム、加えて科学的にこの国では存在し得ない生物や植物が在ることで示している。

 例えば、国の保有する図書館には、どうにか復元して端々が読める程度となった、魔法書が保管されている。
 そこには、現在では誰も扱うことのできない「召喚魔法」の記録や、その仕組みが記されていた。
 大事な部分も、そうでない部分も虫食いのように穴だらけで、今や理解することさえ難しくなっているが。

 また、この国で存在し得ない生物や植物だが、では他の国では存在できるのかというと、世界全体を見ればそうではない。
 元来、この世界では複数の種族が存在していた。
 エルフや妖精、精霊、ドラゴン、獣人族や鳥人族、亜人――知力が有り、コミュニティを築いている種族は昔からいる。

 だが面白いことに、今や世界の半数の知力在る者としての種族、ヒューマン、人間は。
 こと数千年の間、保管されている書物や記録、果ては石版や壁画を介して調べても。

 世界に、人間は存在していなかった。
 『もともと』世界に人間がいなかったのである。

「いっけぇえ!! ミノタウロス!」

 青年が「スキルダイス」を振り、大きな雄叫びを上げてミノタウロスが、片手の斧を龍――シーサーペントへと振り下ろす。
 同じくして「アイテムダイス」を振った男性のシーサーペント側に、ガキンッと斧を弾く透明な壁が喚び出された。

「あっ!! ……くっそ、シールドか」
「どうやら、キミの出目が良くなかったらしい」
「……うっ」

 さて、バトルダイスへと話を戻そう。
 このゲームの流れは至って単純明快だ。

1.召喚ダイスをひとつ選び、振る
 出た数字の2倍が、レベルとなる

2.「スキルダイス」「アイテムダイス」「補助ダイス」いずれかを選び、同時にダイスを振る
 ダイスの出目によってそのダイス効果に違いが現れ、出目が勝った方のダイス効果を得る
 ただし、「補助ダイス」のみは出目に応じた効果を得ることができる

3.以上を繰り返し、相手の体力を0にした者が勝利する
 体力は、最初に振った召喚ダイスのレベル×5

 「召喚ダイス」その他種類のダイスも含めて、面の数が異なり、ダイサーのランクによって扱えるものの上限が決められている。
 多くは運が絡む勝負ではあるが、出目が悪くとも「補助ダイス」を駆使することで、初期体力に差があってもひっくり返すことが可能だ。

 さて、ダイスバトルに用いられるダイスは、今では失われてしまった召喚魔法アイテムを駆使して作成されたものだ。
 国の、世界のトップレベルの研究者たちが知恵を出し合い、絞り合い、完成させたのがダイサーが扱うダイスなのである。

 基本的に、遺された召喚アイテムに限らず、魔法アイテムは、一度使うとそれきりになってしまうものがほとんどだ。

 しかし、「保存」を行うことができる魔法や、時間を巻き戻したり、様々な調整を加えられる魔法を組み合わせ、練り合わせて今の「ダイス」という形になり、当初は別の目的に使用されていたものの――今では、そのままそれが娯楽として使われるようになった。

 言うなればダイサーは、現代の召喚士と呼べる存在だろう。

 先程から街で繰り返されているダイスバトルに、観衆たちが寄ってくる。
 ダイスが生み出されてから長い年月をかけて「バトルダイス」という娯楽へと昇華した召喚魔法は、街中の野良バトルのみならず国や街が打ち出す大会や、試合で多くの人々が観戦し楽しむようになった。

 青年の扱うミノタウロスが、シーサーペントの激流のような水のスキルを受けて、片膝をつく。

「グァォォァアァアァ……!!」
「くっそ、ミノタウロス! もう一度いくぞ――」

 整備された道路が、地面を抉りながらミノタウロスが立ち上がり、斧を横薙ぎに振る。
 ブォン、と空気を切る音と共に、シーサーペントの腹部から青い血が吹き、それがぱたぱたと道を汚していく。

「くっ。……シーサーペント、大丈夫か」
「シャァァゥゥゥゥ……」

 ところで、「バトルダイス」は召喚魔法である。
 幻影でも、映像でもない彼らは、「現実」に存在する。

 抉れた道、汚した地面。

「くぉぁらああああ!!!! てめーら!!!!」
「げっ!!」
「……おっと」

 バトルが終われば修復されることはなく、そのまま誰かが直さない限りは残るのである。

「やっべ、ミノタウロス、逃げるぞ!」
「こちらもお暇しようか。行こう、シーサーペント」

 青年はミノタウロスの肩に、男性はシーサーペントの背に乗り、それぞれがそれぞれの方向へと散って逃げていく。
 人の足では追いつけるはずもなく、綺麗に太陽の光を反射させる褐色肌のオヤジが、悔しそうに何かしら叫んだ。

 ……この国では今日も、魔法や技術を駆使し、街や自然の修復を行う「修復師」が活躍していた。

 これもまた、「ダイサー」と「修復師」の日常茶飯事的な勝負なのである。

————————-【切り取り線】—————————

こぼりたつやさん(@tatsuya_kobori)主催、3000文字チャレンジです。

お題は【勝負】ということで、某少年漫画雑誌並にテンション高めに書きました。
これ、正直続き物でもできそうなんですけど(書いている内に出せない設定も生えてきた)さてどうしようかなってところです。
特に回収してない設定とか詰んでますからねこれ。だめじゃん!!
ただ、勢いで書くと長編は大体エターナルので(永遠に続きができない)

今回のお話は、実はもともとはバトルえんぴつを題材にしようと思っていたんですよね。
バトルえんぴつ、子供の頃大好きで集めたり、友達と遊んだりしていました。
それをアニメの遊戯王みたいにフォォンって召喚できたらめっちゃ楽しいだろうなって思ってたんですが、いかんせん文章向きではないのであった。

ので、がっつりファンタジーしながら勝負に絡めて書こう……って思ったらゲーム内容の説明がほぼ占めてるという結果に!
お話というよりは説明みたいな小話になってしまいましたが、楽しんでいただけたら幸いです。

次はねーー 次のお題はねーー 
参加するかどうか悩んでます(笑)

自分で考えたお題ってなんかやりにくいな!!!!!!

 

そろそろまとめ記事が必要だと思う3000文字シリーズ

【3000文字月曜日】
歩む道先、選ぶ朝

【3000文字おすすめ】
【○○】のすゝめ
3000文字登山のすゝめ

【3000文字橋】
ひととせの夏、橋の夢

【3000文字フレグランス】

フレグランス、売ります、買います、作ります

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