-*収穫*-

収穫 3000文字チャレンジ
収穫
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 そこは、規模3桁いくかどうか、数十人程度の小さな村だった。

 地上の起伏は少なく、それなりに広い土地。
 木材で建築されている家々や、施設、そして広大な牧場はきつすぎも間が開きすぎもせず、丁度良い間隔で存在している。

 牛、鶏、豚に始まり、羊や馬、犬や猫。
 様々な動物を村全体で飼育しているようで、むしろ彼らが占有している土地は人々のそれよりも広い。
 家畜、動物たちの世話にいそしむ姿があちらこちらで見受けられる。

 さて、そんなのどかな村の、端。
 森に程近い場所で、物々しさを感じる装い――武装した人々が十数人、集まっていた。

 物々しいと言っても身に纏うものは、良くてせいぜい革でできた防具や、青銅や石でできた鎌、斧、槌。
 それも、何年も何年も補強や修繕をしながら使われているのであろう、あちこちにつぎはぎの跡や、薄汚れた箇所が目立つ革鎧。
 青銅、石の武具はきつく縄で手元が止められていたり、持ち手が明らかに他と異なる素材を使っていたりと、やはり修繕の箇所が見られる。

 リーダーらしきたくましい肉体を持つ男性が、青銅の斧を掲げて集まった人々に言葉をつむぐ。

「良いか! 我が村の備蓄はほとんどない! そして、街から訪れる商人もこの暫くの間、ほとんど来ていない!
 彼らを待って取引を行う手もあるだろう、しかし、いつ訪れるか分からん商人たちを待ち続ける余裕は、今はないと言って良い!」

「ではどうすれば良いのか! 答えは難しくはない、幸い村の近くには森がある!山がある!
 つまりは我々で”獲ってくる”ことが可能なのだ!」

「昨今、流通が良くなったことで、わざわざ森から獲ってくることは少なくなった。
 しかしそのツケが今、回ってきたのである!
 ――今こそもう一度、村のため! 家族のため! 己のため! 
 そしてあの喜びのため!向かおうではないか!!」

 ――うぉぉぉおおおぉおぉぉぉぉぉぉッッ!!!!

 十数人ほどの武装した、屈強な男女たちが村全体に響きわたるほどの雄たけびを上げる。
 相当な気合が入っているのか、たぎりすぎているのか、若干オーバーとも言えるリーダーの言葉を受けてよりいっそうやる気をみなぎらせているようだった。
 そしてその勢いとやる気のまま、ぞろぞろと森へと向かっていく。

 その近くでのほほんと、「元気だねえ」とのどかに言葉を交わすご老人夫婦がいた。
 のんびりと日向ぼっこをしていた猫は、マイペースにくぁ、とあくびをこぼしてうとうとと眠り始める。
 牧畜を生業としているこの村は、どこまでものどかで、どこまでも平和であった。



 村を出て森に入り、奥へ奥へと進んでいく。
 周囲の警戒を怠らず、視線を巡らし、気配を見逃さないよう注意深く歩いていく。

 時折彼らの耳に届く葉の音や、木の枝を踏む音に数人がさっと振り向き、何もいないと分かればほっと安堵の吐息をこぼして改めて前を向き、歩む。

 と、

「しッ」

 戦闘を歩いていたリーダーが、片手を真横にすばやく広げ皆の動きを止める。
 彼と、後続の人々が息をのみ、暫くの間耳を澄ませて気配を探った。

「……あちらだな」

 声量を極力抑えた、低い声。
 皆と顔を合わせて小さくうなずき、かすかな物音と、気配を感じる方向へとゆっくりと動き始める。

 森の中の、小さな湖。
 茂みに身を隠し、どうやら水浴びをしているらしい獲物――赤く、少しいびつな丸い形をしている――を視界におさめ息を潜めた。

 ころ、とその丸い体を転がし、つやつやとした体を比較的浅い場所で沈める。
 複数その場に存在する獲物は、ぷか、と浮かぶものや、そのまま少し沈んでいくもの、少し緑がかったもの、大きいものから手のひらにおさまる程度の、とても小さいものまでと種類は様々だ。

「生でいけそうなものもいるようだな」

 獲物たちの動きや水への沈み具合を見て、集団の誰かが小さく呟く。
 再度リーダーと彼らが視線を合わせて、一瞬後に茂みから勢い良く飛び出した。

 その動きは熟練の兵士のように迅速で、それからはとても早かった。

 村を出た時とは違い、声を、なるべく音を立てることなく獲物を素手で捕まえる。
 比較的小さな体のものや、水に沈んでいたものを中心に拾い上げ、いくつかはそうして持ち込んだ袋の中へ直接詰められたが、数瞬後には赤いそれらが牙を剥いた。

「っし、袋へ入れた分は潰すなよ!中がぐちゃぐちゃになっちまう!」
「了解!!」
「それと袋持ちは下がれ!ここからは戦いになる!」

 リーダーが叫ぶと同時、袋を持っていた者はすばやく茂みへと戻っていく。
 牙を剥く赤いそれらは、頂点部についていた緑色の部分をざわざわと震わせ、話している間にも飛び掛ってくる。

 緑色の頑丈な蔦、刃のように鋭い葉、彼らの意思で大きくなる凶器と呼べるものを振り回す。
 そして、それらが男たちが手に持つそれぞれの武器がぶつかり、キィン、ガキンッと金属音がぶつかり合うような音を森に響かせた。
 獲物たちの中にはその身を挺しても、仲間たちを守ろうと思い切り体をぶつけるものもいた。

「ぐふっ」

 案外その勢いは強く、また緑に近い色合いをした比較的硬いものが体当たりを行ってくるために、腹部やみぞおちを狙われると相当な痛みを伴う。
 衝撃に膝を崩すもの、蔦に拘束され締め付けられるもの、葉に切りつけられるもの、呻き声や雄たけび、ものがぶつかる音が響き続けるが、時間と共に少なくなっていく。

 赤い獲物の蔦や葉は、鎌や斧の刃を何度も受けるうちに傷がつき、切り落とされた。
 体ごとぶつかってくる獲物も、何度も立ち向かうと衝撃に皮が耐えられなくなってくるのか、柔らかく、最初ほどの威力が出ないどころか中身をぶちまけているものもいた。

 そうして少しずつ数を減らしていく中、獲物の集団の中でもひときわ大きく真っ赤に熟れた体を持つものとリーダーが対峙する。
 しかし、戦いの終わりはあっけなく訪れる。

「――お前がラストだ」

 青銅の斧を振り上げ、直後振り下ろされた刃にぷちぷちと皮が切れる音。

 感触を男に残しながら、それが真っ二つになった。

 じゅくじゅくとした中身と粒が見える獲物を見下ろし、一息つく。

「やりましたね! 大量ですよ!」
「この水場はやっぱり良いなぁ」
「とはいえ、あんまり持ちはしないだろ。他の種類も欲しいところだ」
「どうせならほら、黄金色のような体の、あれが欲しいよなぁ」
「いや、家畜たちの餌になる黄色のやつも必要だ」

 殺気立っていた村人たちは、ひとまずの獲物を獲れたことに喜びを隠せない。
 まだまだこれから獲らねばならないとはいえ、一応の収穫があればそれだけでも安心するというもの。

「丁度良い、この水場で少し休息をとったら、また別の獲物を探すぞ」
「了解だ!」
「ちょっとくらいつまんじゃだめっすかね?」
「お前なぁ……いや、気持ちは分かるけどな」
「私は、なまぐさくって生は苦手なのよねえ……」

 それぞれが談笑を交わしつつ、水を飲んだり、軽く体を動かしたり、武具をきれいにしたりと思い思いに休憩の時間を過ごす。
 リーダーも周囲への見張りも兼ね、少し離れた場所の木に軽く体を預けてその様子を見渡していると、恰幅の良い女性が歩み寄り声をかけた。

「いやはや、久々なせいか、なかなか大量だったんじゃあないかい」
「あぁ、そうだな。その点では商人さまさまと言った所か。
 とはいえ、やっぱり俺たちはこうして体を動かした方が何かとしっくりくるなぁ」
「あっはっはっ! あんたらしいねえ。あ、あんたも一粒どうだい、ミニトマト」
「いや、俺も実は生のトマトは苦手なんだ」
「おやまぁ」

 和やかにそんな言葉を交わしつつ、彼らは数分後には再度森の中を進み、獲物を探すだろう。

 のどかなあの村に住まう人々は、家畜を育てる他、森や山、草原から「野菜」や「果物」を獲物と呼び、獲ってくる。
 それがこの世界の彼らの仕事で、役割であるからだ。

 彼らが――農民であるからだ。

 

–fin

 

 


はい、3000文字チャレンジ(@challenge_3000)今週の分ですね。
アイキャッチが見事にネタバレしてますね!お題は【野菜】でした。
いやアイキャッチで……わかる、かな?これトマトだよ!Tomato!🍅

トマト、私はまるかじりするのが好きなのですが、だめな人はとことんだめだと知っています。
青臭かったり中のじゅくじゅくが苦手だったりするのでしょうか。
実家にいたころは、夏が近づくとむしゃむしゃしてました。
夏バテ予防。

トマトに限らずお野菜はなんでも好きです。
小さい頃、セロリが苦手だったのですが、「これはうどっていう野菜だよ」って出された生のセロリをマヨネーズつけながら美味しい美味しいしてました。
以来、好物です。

お野菜食べようね!

 

 

 

(=^・・^=)

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